ソフトウェアの受託開発と脱出ゲームメーカーやレシピブックマーク等のアプリ開発を事業としている株式会社スプリングボード。同社は6年前から全社員がテレワークを行っています。代表取締役社長の櫻田 晋一さんに、持続可能なテレワーク化を行う秘訣を伺いました。
—— スプリングボードさんはいつから全社員テレワーク化を行ったのでしょうか
2014年12月からです。かれこれ6年間ぐらい続いています。当時の社員が家庭の事情で在宅勤務とせざるを得なかったため、テレワーク化しました。
—— テレワークを実践する上で気を付けることは何ですか?
オン・オフのメリハリをつけることです。長期間家にいても平気な人もいれば、外で飛び回ることで生きがいを感じる人もいる。だれもが自分の生活リズムというものを持っていて、それを阻害されると働きづらさを感じるようになります。そこで当社では社員に仕事と仕事以外をきっちり分けてもらうようにしています。例えば、着替える、シャワーを浴びる、夕方に散歩するなど自分にあった気分転換の習慣をつけて、生活リズムを保つようにしてもらっています。
通勤が気分転換になっている社員もいました。その社員は新型コロナウイルス感染症の拡大以前には週に1回は出社していましたが、この状況なので不要不急時以外には出社しないよう指示しています。
—— そもそも、テレワークのメリットはなんでしょう?
通勤がないので、その時間を仕事にあてることができます。また、家族がいる人にとっては家族と過ごす時間を確保することができます。副次的な効果としては、寄り道をしなくなるので出費が減るといったメリットもあります。
—— テレワークの推進にはどのような苦労がありますか?
職歴が浅い社員の横について指導ができないため、こまめにフォローできないという点が苦労します。おそらく今はどの会社もこの4月から社会人になった人に対するフォローをどうすればよいのか右往左往しているのではないでしょうか。
—— テレワークで不便だと思ったことはありますか?
業務的にかかわりがない社員同士との会話が減るのが難点です。雑談やノンバーバル(非言語的)なコミュニケーションが減ってしまうため、横のつながりが弱くなります。加えて当社は拠点が東京と松江にあり離れているため、日常的に顔を会わさない社員がいる。その対策として以前からいわゆるオンライン飲み会のようなものをやっていました。直接的な業務以外のつながりを保つための工夫をすることが重要ですね。
—— 世の中にはテレワーク化がなかなか進まず苦労している企業がありますが、どうすればいいと思いますか?
当社は社内のコミュニケーションツールとしてSlackを採用しています。業務時間中はSlackはつなげっぱなしにしていますが、ちゃんと在席しているかといった監視のようなことは特にしていません。Slackにはアクティブ、離席中などのステータス管理の仕組みがありますがそれは特に利用せず、発言で「コンビニ行きます」とか「税務署いきます」などと在席状況を表明することにしています。社員との信頼関係を築くことが大切です。
他には、マイクロマネジメント(上司が過度に部下を制御したり細かく指示すること)を行わないことが重要です。単純なことですが、最初に計画と成果物を定義して進め、その過程については任せる。これを行うには、部下の能力よりも上司が明確な完成イメージを持てるかという能力に大きく依存するので、上司はこの点を鍛えるべきです。
世の中には徐々に擦り合わせをしながら行なわなければいけない業務もあるので、職種や業種でテレワーク化のやりづらさが異なるのは当然だとは思いますが、デスクワークであればなんらかのやり方があるのではと思っています。例えば社内で完結する書類のハンコは撤廃すべきです。電子的なシステムの整備が必要なのは言うまでもないですが、併せてに古い手続きを刷新する必要があります。
コミュニケーション面のケアも重要です。当社では勤怠システムとは別に、Slackで出勤や退勤、有給取得などを連絡し合うようにしています。こうすることで、全員が出勤状況を把握することができます。テレワークでもチームとして働いていることを自然にとらえられるようにすることが重要です。
—— ここのところテレワーク疲れや、顔を合わせず寂しいといった声が聞かれますが、社長が解消するならどんなことをしますか?
やはり実際に会えるのであればあったほうがよい(笑)。それができない場合は、オンラインで雑談を開きます。もともと東京だけでなく島根にも社員がいるので、全社的にオンラインでの座談会はだいぶ慣れています。テレワークだからこそ、気分転換の方法を見つけて習慣化してもらい、また雑談の機会を設けるなど、業務面以外のケアが大切だと思います。
(つづく)