3分でわかるペーパーレス化が進まない理由

ペーパーレス化で経費節減、環境保護、生産性向上!ペーパーレス化まったなし!そんな風潮がずっと続いていますよね。にもかかわらずぺーパーレス化は進んでいません。なぜでしょう?

そもそも需要がない?

あるいは、流行に便乗するために宣言しているだけで、本当はだれもペーパーレス化なんてやりたくないのでは、という疑問が湧いてきます。ところがそうでもなさそうです。下の図は2012年(平成24年)の情報通信白書から抜粋したものですが、ご覧の通り企業が組織・業務プロセス改革の取組で最も力を入れているがペーパーレス化です[1]。なんとかしようとして、手をつけてはいるんです。

紙は減った?

これだけ全国でペーパーレス化が推進されているのですから、さぞや紙が減ったことでしょう。でもそうでもありません。下の図は日本の印刷・情報用紙(いわゆるOA用紙)の需要の推移ですが、1990年(平成2年)から2016年(平成28年)の26年間で、なんとわずか7%しか減っていません[2]。

ペーパーレス化、いつから?

そもそもペーパーレス化という概念は1970年(昭和45年)頃に生まれました[3]。日本におけるPCの開拓者とされるNECのPC-8001が生まれたのが1979年ですから、まだオフィスにPCのピの字もない頃です。それから40年以上が経ち、PCの普及、スマホの台頭、デジタル技術の進展など破壊的イノベーションが続出しました。しかし、それでもペーパーレス化は進んでいません。

企業が最も力を入れており、40年以上前から省力化の切り札と言われているペーパーレス化の取組。だけど、紙は減っていないのです。

その理由は?

いろいろ理由はありますが、一番しっくりくるのが、紙で提出・保管・配布する規定があるためです。下図は富士ゼロックスの柴田博仁さんが集計したアンケート結果ですが、紙への印刷理由第一位は「紙で提出・保管・配布する規定があるから」となっています[4]。そりゃそうですよね。身の回りを見ても、役所への提出書類はほとんどが紙です。クレジットカードの申し込みも、銀行の口座開設も、会社の年末調整も、お店でもらう領収書も、取引先に送る請求書も、入学試験も、みんな紙です。一部は電子化が進んでいますが、まだまだ少ないという状況です。

じゃあ規定を変えればペーパーレス化は進むかと言えば進むでしょうが、そう簡単には行きません。法律や条例といった規定はそう簡単には変えられません。企業が外部と取引する限り、外部の制度まで変えることはできません。紙が当たり前の情報伝達の手段であるという慣習も簡単には変えられませんし、なによりも紀元前から人類が使い続けているものを、高々40年でガラガラポンできるわけはないのです。このように、規定、制度、慣習、文化に紙が深く埋め込まれていることが、ペーパーレス化が進まない理由なのです。

(次へ続く)

出典

[1]総務省:平成24年版 情報通信白書(2012).

[2]日本製紙連合会:製紙産業の現状

[3]塚谷 顕見:情報機器と紙の現代史 「ペーパーレス・オフィス」とは何だったのか(第1回), 紙パルプ技術タイムス, Vol.53, No.9 (2010).

[4]柴田 博仁:ペーパーレスオフィスはなぜ来ないのか?紙はどこで使われるのか?, 日本画像学会論文誌, Vol 56, No.5, pp.537-544 (2017).