頑張っているのに気づかずハマるおなじみのバイアス

バイアス

「俺は結構がんばっているのに、どうもうまくいかないんだよなー」、「知らず知らずのうちに、いつも同じような結果になっている」。身に覚えはありませんか?

人間が無意識に陥ってしまう特性を4つご紹介します。ビジネスでこのバイアスを意識して補正できるようになれば、むしろ他者に使いこなせるようになれば、ちょっと成功に近づけるかもしれません。

手に入りやすい情報だけで判断してしまう特性

首都圏に住んでいる人であれば、コンピュータや家電製品を買うなら秋葉原だ!と思いませんか?あるいは、おしゃれな美容室なら表参道だ!でもいいと思います。しかしなぜ、電気屋さんや美容室はわざわざ火中の栗を拾うように過当競争の地に出店するのでしょう。理由は、店側は想起しやすい事柄を優先して評価しやすい人間の特性を十分に知っているからです。これを「利用可能性ヒューリスティック」といいます。

見たいものしか見ない特性

人間には、自分が求めている情報や自分の仮説に合致した情報だけを集めようとする傾向があります。これを「確証バイアス」といいます。この特性から意識的、無意識的逃れることはとても難しいのです。

たとえ事実だとしても、聞きたくないことってありますよね。もしそれが、正しい判断に資することであっても、耳をふさぎたくなることがあると思います。これはまだいいほうで、無意識にこの特性が働いているとしたら、誤った判断をしつづける可能性があるということです。

事実を認めない特性

前述の確証バイアスとも関連があるのですが、人間には「自分の認知的な整合性を保ちたい」「自分は有能であるという感覚を守りたい」という強い欲望があります。意思決定したあとにもっと優れた選択肢が見つかると、自己有能感が傷つく。だから決定したあとはなるべく関連情報を遠ざけて見ないようにする特性があります。これを「認知的不協和」といいます。

認知的不協和が発生すると、補正する方法は2つあります。1つは自分の信じていることに周りを合わせようとすること、もう1つは事実に対する自分の認識を変えることです。人間は自分が有能であるという強い認識を持っています。それが脅かされる事実に直面した場合、自己有能感を捨てることは困難です。よって、事実の認識を変更してしまうのです。

偏った情報で判断してしまう特性

第二次大戦中、イギリスからナチス支配下の欧州大陸へ爆撃機が飛んでいきました。戦闘機や高射砲に撃墜されて戻らない機もあったし、被弾しながらも帰還した機もありました。英軍は帰還の確率を高めるためにもっと厚い装甲を施すことにしましたが、機体の全面に装甲板をつけると重量がかさんで燃料の消費が早く、往復できません。そこで機体の重要な箇所を選んで装甲板をとりつけることにしました。統計をとると、最も被弾する頻度が高いのは、主翼、尾翼面、尾部機銃室であることが分かりました。そこを中心に装甲をほどこせばよいのでしょうか。

答えは、主翼、尾翼面、尾部機銃室以外です。なぜなら、統計の対象がなんとか帰還できた機体ばかりだったからです。つまり、これらの場所に被弾しても致命傷にはならない、ということです。それはどこかというと、操縦室と燃料タンク。そりゃそうですよね、この2か所を撃たれれば、即撃墜されますから。

このように、サンプルをとった時点ですでに消えてしまっていたデータを無視してしまうことで生じるデータの偏りを「生き残りバイアス」といいます。

これらのバイアスから逃れるのは極めて難しい

普段から意識したとしても、これらのバイアスから逃れるのは極めて難しいですが、それでも全く意識しないよりは流されにくくなるかもしれません。私のおすすめは、むしろ人間はこれらのバイアスから逃れられないという特徴を利用して、他者とうまくやっていくことです。

例えば、利用可能性ヒューリスティック。鉄板とか常識とか呼ばれているものが如何に強力な武器になるかを物語っています。だれかを説得したり、合意を得るためには、鉄板や常識から入るといいかもしれません。

認知的不協和は、相手が一度信じたこと、決めたことをひっくり返すことが極めて難しいことを意味します。ここで以前の記事で書いた小さく始めることが威力を発揮します()。小さなことでいいから、一度決めてもらうことで、ひっくり返されにくくなります。それを積み上げていくのです。これは確証バイアスとも関連があります。

出典

ロバート・B・チャルディーニ (著), 社会行動研究会 (翻訳):影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか, 誠信書房 (2014年).

長瀬 勝彦:意思決定のマネジメント, 東洋経済新報社 (2008年).