ただでさえ手いっぱいなのにペーパーレス化しろって言われても。

(前回の続き)

40年以上も企業のペーパーレス化に進展はありませんでしたが、そんな苦悩は知ったこっちゃないとばかりに、社会はどんどん変わってきました。

生産性の低さと人手不足

まず日本の労働生産性の低さの露呈。下図はOECD諸国における労働生産性の比較です。赤が日本ですが、先進7か国の中で最下位となっていることがわかります[1]。

次に少子・高齢化です。2016年から2040年にかけて397万人もの生産年齢人口がなくなります[2]。

これを受けて、人手不足が深刻化します。下図はいわゆる人手不足感を表した図ですが、2012年を境にガンガン悪化しているのが見て取れます[3]。

特に管理職以上の方は、人手不足に悩まされているのではないでしょうか。中途採用市場も、これはいいなと思った人材は速攻で他社に取られたりしてますよね。これが今後さらに悪化していくのです。

このように、ペーパーレス化が進まないといった悩みなんてお構いなしに、生産性が低いまま人手不足時代に突入してしまいました。

(脱線)日本の生産性が低いって本当?

日本の生産性が低いという解釈は世間一般に知られていることですが、丹念に情報を読み解くと必ずしもそういい切れるわけではない、という点も補遺しておきます。

労働生産性は、

\begin{eqnarray}
労働生産性=\frac{産出量(新しく生み出された金額ベースの付加価値額)}{労働投入量(労働者数 又は 労働者数×労働時間)}\\
\end{eqnarray}

で表せます[1]。簡単にいえば、少ない人数でお金をたくさん稼げば、労働生産性は高くなります。ところで、労働生産性を国際比較する際は、一物一価の法則の法則に従います。例えばゴルフ場の利用料、日本の場合は原則キャディさんがつきますが、米国の場合つけない選択もできます。日本の旅館の丁寧なおもてなしも、米国のぶっきらぼうなモーテルも、いっしょくたに「宿泊業」として扱われています。基準がないと比較もできないのでこうしています。これらから言えることは、同じカテゴリの製品・サービスでも、質素なものは労働生産性が高くなってしまう傾向があるということです。

付加価値額として現れない価値は、労働生産性には乗ってきません。世の中には、特に日本には、このような直接的な経済的効果として現れない価値を生み出している企業もあると思います。そして、それを強みとしている企業も当然あるでしょう。日本の労働生産性が低いという批評にピンとこない方は、間接的な経済的価値の恩恵を実感しているからかもしれません。

でも悪化している実感はある

とはいっても、全般的に経済活動が難しい状況に変わってきているというのは統計を持ち出さなくても実感で十分わかります。さらに、法律が変わります。いわゆる「働き方改革関連法」です。

(続く)

出典

[1]参議院常任委員会調査室・特別調査室:我が国における労働生産性をめぐる現状と課題, 立法と調査, No.401(2018).

[2]総務省:国勢調査、人口推計、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」平成24年1月推計)」により作成。(注)2016年は概算値。

[3]中小企業庁:2019年版「中小企業白書」, 第4章人手不足の状況(2019).

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